戦火の中、ウクライナの文化遺産を守る
物質的文化遺産の保護
ウクライナで続く壊滅的な紛争の中、民間人と専門家は国の豊かな文化遺産を守るためにたゆみなく努力しています。混沌と破壊のさなか、ウクライナの人々は貴重な工芸品、建物、記念碑を保護しています。
リヴィウでは、建設作業員が街の象徴であるラテン大聖堂を守るため、足場を建て、ステンドグラスの窓に板を打ち付けました。街の市場広場にあるギリシャ神々の彫像は、耐火性の覆いで保護されています。
同様の取り組みが全国で行われています。ボランティアは、ウクライナの国民的詩人タラス・シェフチェンコの像を砂袋で覆いました。オデッサでは、リシュリュー公爵の新古典主義様式の記念碑が、同じように砂袋の壁で保護されています。
こうした保護策にもかかわらず、ロシア軍はチェルニーヒウの歴史的な中心部、19世紀の木造教会、イヴァンキウ歴史郷土史博物館など、いくつかの文化施設を損傷または破壊しました。
美術品や工芸品の移送と保護
美術館や文化施設は、貴重な所蔵品を守るための措置を講じています。リヴィウのアルメニア教会から、イエス、マリア、マグダラのマリアを描いた木製の祭壇画が取り外され、安全のために地下壕に運ばれました。
オデッサでは、美術品の多くが美術館の地下室に隠されました。一方、キーウにあるウクライナ国立歴史博物館の職員は、重要な工芸品を安全な場所に移動させました。
キーウ中心部にあるウクライナ国立歴史博物館は、スキタイの武器や氷河期のマンモスの牙で作られたブレスレットなど、先史時代の工芸品を安全な場所に移動させました。
保存と救出活動
保護生物学者のアントン・ヴラシェンコ氏は、ハリコフで砲撃が始まったとき、冬眠中のコウモリを冷蔵庫から出してアパートに移動させるため、自らの安全を顧みませんでした。彼はまた、センターのコウモリの頭蓋骨のコレクションを移動させ、弱って放すことができないコウモリを救出しました。
デジタル化とオンライン保存
物質的文化遺産の脆弱性を認識し、ヨーロッパと米国のボランティアが「Saving Ukrainian Cultural Heritage Online（SUCHO）」イニシアチブを立ち上げました。彼らは1,500以上のウェブサイト、デジタル展示、オープンアクセス出版物のバックアップを作成しました。
SUCHOのボランティアは、デジタル化の重要性を身をもって体験しました。ハリコフ州立公文書館から105ギガバイトのデータを収集したわずか数時間後、紛争のためにウェブサイトがダウンしました。
希少本のスキャンや科学的記録を含む保存データは、ウクライナ国外のサーバーとインターネットアーカイブに保存されています。
国際協力と支援
世界中の図書館や文化施設が協力して、ウクライナの遺産保存活動を支援しています。SUCHOの共同主催者であるタフツ大学のアンナ・キヤス氏は、文化コレクションを保護することは世界的な責任であると強調しています。
ウクライナのアイデンティティへの影響
ウクライナの文化遺産の保存は、国のアイデンティティと歴史を保存するために不可欠です。博物館館長のオルハ・ホンチャル氏が述べているように、「モスクワはウクライナの文化を根絶したがっています。それは私たちと私たちのアイデンティティを定義するものです。私たちが何者であるかの記憶です。」
継続的な努力と課題
進行中の紛争とその破壊にもかかわらず、ウクライナの人々とその国際的なパートナーは、文化遺産を守る努力を続けています。戦争が激化するにつれて、ウクライナの文化遺産の保存と保護は、国の歴史とアイデンティティの保存にとって極めて重要です。
